感染性胃腸炎とは



乳幼児はよくお腹の風邪を引きます。
感染性胃腸炎と言いますが、ここでそのメカニズムを説明します。

感染性胃腸炎の多くはウイルスによるものです。

一番重症になりやすいのがロタウイルス、次に牡蠣で有名なノロウイルスがあります。
その他あらゆるウイルスも原因となります。

ウイルスは鼻や口から入ります。それを飲み込んで発症するわけです。

飲み込んだウイルスは、最初は胃の粘膜細胞に感染します。
細胞の中でウイルスは倍倍に増えていくので、あっという間に何万倍にも増えます。
増えすぎたウイルスは細胞を飛び出して、他の細胞に感染することになります。

ウイルスが増えすぎると危ないし、できるだけ体の奥に入れたくないのですね。
ですので、胃は幽門という出口を閉めると同時にけいれんし、中身を外に出そうとします。
その結果おう吐するわけです。

おう吐はウイルスを追い出すための体の反応と言えます。
こういった症状がなければ、ウイルスはすぐに胃を越えて腸に入り込んでしまいます。

おう吐は苦しいですが、悪者ではないわけですね。

感染性胃腸炎を起こすウイルスの中で、ロタウイルスとノロウイルスは群を抜いて症状がきついです。
これはウイルスの増えるスピードが他のウイルスに比べて速いからです。
そのため、胃や腸も激しく反応します。一晩に10回くらいおう吐するのも稀ではありません。


胃の頑張りもむなしく、ウイルスが幽門を越えて奥に入ることも多々あります。
幽門の向こうは何でしょう?

十二指腸ですね。その先に小腸があります。

感染性胃腸炎が重症化するのは、ウイルスが小腸の粘膜に感染した場合です。というのは、小腸は水分や栄養分を吸収する場ですので、その機能が悪くなるばかりか、ウイルスによっては腸液が無理やり出てしまうからです。

右の写真はノロウイルスに感染した子どもさんのお腹をエコーで見たものです。白い円形の物がたくさん見えます。白いところは腸の壁で、黒いところは水です。ウイルスが腸の粘膜に感染して、大量の腸液が腸の中に溜まっているために、このように見えるわけです。

※腸液の中にはウイルスがたくさんいます。

腸液として水分が出てしまうと、血管から水分が抜けるので、体の外にでてしまうのと一緒です。ですので、脱水が進みます。


もういちど右のエコー写真を見てください。黒い部分が水です。
これだけの水分が流れていくと、その後の大腸で水分を吸収しきれないので、水のような便が出ます。
また、腸液は透明ですので、白っぽい便が出るのです。

腸は胃に比べてはるかに長く、失われる水分量も大きいことに注意が必要です。
大量の下痢便が出る場合は脱水に注意して下さい。


感染性胃腸炎は大変ですが、通常はおう吐、下痢でウイルスを追い出してしまうことで自然に治ります。

ただ、その間、水分が失われる上に、口から水分がとりにくくなるために、脱水が心配です。
水分のケアを考えてください。これが最も重要です。


お茶や水を飲んでいれば良い、、、と良く勘違いされるのですが、、、
最初はそれでも良いのですが、お茶とか水では脱水の補正はできないということは知っておいてください。

再度上のエコー写真を見てください。
黒いところの大量の腸液、、、実はこれは塩水なのです。

ですので、水分と一緒に大量の塩分も失われます。これが脱水の原因となります。

また、腸が栄養分を吸収できないのも問題です。
こういったときに必要なのは糖分です。特に小さい子ほど体の中の糖分が少ないので危ないわけです。

以上より

水分 糖分 塩分  を補給してあげることが大切です。

以下にケアの実際を書いておきます。

1、激しく吐いている間は、口をゆすぐ程度にしておいてください。

2、おう吐の間隔が1時間以上あれば、水分をあげてみて下さい。最初はジュースか良いです。比較的飲みやすいリンゴジュースを推奨しています。ジュースが手元になければ水かお茶でも構いません。
 1回は10〜20ccずつ、少量から開始してください。

3、すぐにおう吐するのであれば、もうしばらく(30分〜1時間)様子を見てください。

4、以上を繰り返している間に徐々に水分が入るようになります。
 ほとんどの場合、おう吐は半日〜1日以内に止まります。慌てないでも大丈夫です。
 24時間以上水分がとれないようなら、病院を受診してください。点滴で水分を補給します。

5、下痢が始まってから、脱水の危険があります。
 水やお茶だけを続けるのは危険です。OS-1などの経口補水液をお勧めします。
 手元になければ、イオン飲料で代用して下さい。
 ※普通のイオン飲料は、塩分が足りません。下痢が続くようなら、イオン飲料500mlに小さじ半分程度(1〜2g)の塩を入れると良いでしょう。

6、おう吐物、下痢にはウイルスが多量に含まれます。
 二次感染を防ぐのも大切なことです。消毒は塩素系の物を使ってください。


 





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